[ 武井祥平・高橋琢哉インタビュー ]
―― 想像力と創造力を喚起する風景
WORK with ART Project 開発ストーリー

Interview

解釈の余白を生み出す場づくり

―― ミュージアムタワー京橋の1階から3階にかけてのエスカレーター空間、そして3階オフィスラウンジに展開されるアート作品において、武井さんは監修を務められました。植栽や音楽といった作品をとおして、訪れる人にどのようなことを働きかけているのでしょうか。

武井祥平(以下、武井) 「WORK with ART」というビルのコンセプトから私が想起したのは、人間の想像力/創造力を喚起する場の必要性です。与えられた環境を享受するだけではなく、自分なりの使い方や意味を見出していけるような余白を生み出したいと思いました。

―― フロアでの過ごし方を複数設け、それらを柔軟に選択できる仕掛けがあることを、空間デザインを手がけたI IN(アイイン)さんにうかがいました。

武井 空間の中心に植栽を位置付けたいというデザインの方針があったなかで、その植栽がどのような意味を持つべきか、また、訪れる人が目にするもの、耳にするものとどのように融合してビル全体の印象につながっていくのか。そのような視座を持って、ここにあるべき音の風景を一緒につくっていけるパートナーが高橋さんです。

―― 高橋さんの楽曲制作における場の捉え方について教えてください。

高橋琢哉(以下、高橋) どのような音をつくるかよりも、どのような場をつくるかということを起点に構想を始めます。どういう人がなんのために、どれくらいの時間とどまるのかと理解を深めていくなかで、空間そのものを体感できる音楽のあり方を探っていきます。屋外の舞台演出においても、美術館や博物館の空間演出においても共通するアプローチです。

さまざまな聞こえ方を促す音楽

―― 植栽と音楽をとおして、このオフィスラウンジもまた、ミュージアムタワー京橋のモチーフになっている「武蔵野の森」を体感できる場になっています。

高橋 特定の意図を伝えるような「聞かせる音楽」ではなく、毎日聞いていても心地良くその場にとどまっていられる、自然としての音楽で空間を包みたいと思っていました。当初はフィールドレコーディングによる本物の自然音を使うアイデアがありましたが、それでは生っぽさや音のディティールが強く表れてしまい、いかにも自然らしいという印象を押し付けることになってしまう。この場で目指しているのは、いろんな聞こえ方や受け取り方を促すための余白をつくることです。そのため、フィールドレコーディングよりも抽象度の高い音楽をつくる必要がありました。

武井祥平

エンジニア。nomena(ノメナ)創設者。2012年にエンジニア集団nomenaを設立。日々の研究や実験、クリエイターやクライアントとのコラボレーションを通して得られる多領域の知⾒を動⼒に、前例のないものづくりに取り組み続けている。近年は宇宙航空研究開発機構(JAXA)をはじめとする研究機関との共同研究や、「Tokyo2020 聖火台」の機構設計に参画。主な受賞歴に、⽂化庁メディア芸術祭アート部⾨優秀賞(2022年)、DSA⽇本空間デザイン賞⾦賞(2017年)がある。

高橋琢哉

作曲家、音楽プロデューサー。Oyster Inc.(オイスターインク)代表。音楽を通じた空間と時間の関係、アンサンブルの可能性をテーマに活動。音楽を外界と内面を往来する回路として、物語や夢と同じようなものとして捉えている。1999~2007年はダンサー田中 泯の音楽を世界各地の劇場から非劇場空間まで、さまざまな環境で現場演奏と作曲で全面的に担当。近年は映像作品への楽曲提供の他に、国立博物館の特別展やミラノサローネでのインスタレーションにおける体感的な音響演出の評価も高い。

聞き手:高根枝里(Tokyo Gendai)

現東京現代フェアディレクター。セゾンアートギャラリーディレクター、日本のGoogle Arts & Cultureでプロジェクトマネジャーを歴任し、現在は個人・企業コレクター向けのアートコンサルティングを行う。ニューヨーク大学大学院Visual Arts Administration学科卒業。

聞き手:高根枝里(Tokyo Gendai)
文:長谷川智祥