[ I IN湯山 皓インタビュー ]
――「心身の整調」を促す空間づくり
WORK with ART Project 開発ストーリー

Interview

植栽と光の役割

―― ミュージアムタワー京橋の3階オフィスラウンジは「心身の整調」というテーマでデザインされたとうかがっています。中央の植栽が印象的な空間です。

湯山 皓(以下、湯山) もともとはとても静かな空間だったオフィスラウンジを、動的な空間にしたいという意向を最初に伝えられました。 動的というのは、やかましいという意味ではなく、もっと人が行き交い、集まったりする流動的な場所にしたいというものです。そこで、見るからに動きを感じられるようなもの、目にするたびに変化を感じられるようなものが空間の中心にあるといいのではないかと考えました。初期のアイデアのなかには、植栽ではなく水盤を置くというものもありました。

―― 家具や照明ひとつひとつの形や色味といったものとの調和を感じます。

湯山 家具は、既製品と併せてオリジナルなデザインとして製作したものもレイアウトしています。照明は、まさに今回のポイントです。初めてこの場所を訪れたとき、竣工から5年もの間、綺麗な姿が維持されていることに感動しました。そのような場所に、壁や天井を壊して新しく何かをつくるよりも、今あるものを活かしながら空間の性質をアップデートするべきだと考えました。もっとこの場所にいたいと思えるような場を目指すにあたって、いちばん最初に考えたものが、光の存在でした。

―― とても穏やかな光が空間を包み込んでいて、居心地の良さにつながっていることが分かります。これまでのデザインワークにおいても、光の存在を大事にされてきたのでしょうか。

湯山 どのプロジェクトにおいても光は重要な存在です。空間の受け取られ方を大きく左右するので、場所やコンセプトに合わせて毎回新しい表現にチャレンジしています。住宅であれば、住む方の個性を知ったうえで、そこに合う光の見せ方を考えることもあります。今回は天井のルーバーの間に照明を入れることでグラデーションをつけ、柔らかな印象につなげています。

テラスのような心地よさ

―― 植栽や照明の他にも、居心地をつくりだす要素があるのでしょうか。

湯山 テラスというモチーフを空間に取り入れています。この空間のデザインを考えながら外を歩いていたとき、とあるカフェのテラス席が目に留まったんです。屋内でも、完全な屋外でもないテラス席が持つ居心地の良さにヒントがあるのではないか。そこから、外の空気を取り入れた内空間というテーマで、待合いスペースとワークスペース、ミーティングスペースから成るデザインを進めていきました。

―― 流れている音楽にも、どこか屋外や自然らしさを感じます。

湯山 nomenaさんと高橋琢哉さんが手がけたこの音楽は、建物のある地点の季節や天候に応じて音が変化して行きます。音を通して外と中の空気を繋げている感覚がありますよね。ルーバーや植栽の裏にもスピーカーが設置されていて、音の発信源が近いような遠いような、不思議な距離感で聞こえてきます。座る席によっても聞こえ方が異なることも、空間に動的な印象を与える仕掛けのひとつとなっています。

I IN 湯山 皓

インテリアデザイナー。インテリアデザインオフィス「I IN(アイイン)」共同代表。2018年に東京でI INを設立し、店舗やレストラン、オフィス、住宅、インスタレーションなど幅広い分野の空間デザインにおいて、モダンラグジュアリーの世界を追求している。 突き抜けた美しさのあるインテリアは豊かな未来を感じさせ、人々の記憶に残るデザインとして国内外で評価を受ける。 主な受賞歴に、INTERIOR DESIGN Best of Year Awards、iF Design Award、FRAME AWARDSがある。

聞き手:高根枝里(Tokyo Gendai)

現東京現代フェアディレクター。セゾンアートギャラリーディレクター、日本のGoogle Arts & Cultureでプロジェクトマネジャーを歴任し、現在は個人・企業コレクター向けのアートコンサルティングを行う。ニューヨーク大学大学院Visual Arts Administration学科卒業。

聞き手:高根枝里(Tokyo Gendai)
文:長谷川智祥