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[ I IN湯山 皓インタビュー③ ]
―― 手仕事と土の歴史を伝えるインテリア
WORK with ART Project 開発ストーリー

Interview
ミュージアムタワー京橋の3階オフィスラウンジにて、ソファに座り、身振りを交えながら話している湯山皓氏。

ビルの外観との調和

―― 集中や交流といった用途に合わせて区切られたエリア構成、またそれらの中央に植栽が位置する意味など、空間設計にまつわるさまざまな仕掛けについてお話をうかがってきました。家具や照明以外にも、インテリアの特徴があるようにお見受けします。

湯山 皓(以下、湯山)ここで働く人たちに愛着を持ってもらえる場所にしたいと思い、ミュージアムタワー京橋の外壁の特徴でもあるルーバーの構造を天井部やインテリアに取り入れました。このビルは、外の光をいかに内部に届けるかということを徹底的に計算してつくられています。そのような、ビルで過ごす人々のことを想ってつくられたものを、内部空間のデザインにも関連づけたいと思いました。

オフィスラウンジ内に吊るされた照明の意匠越しに、真剣な表情で話す湯山皓氏。

―― 形状こそ同じではありますが、これらのルーバーはこの空間のために新たにつくられたものなのですね。

湯山 岐阜県の多治見で、ひとつひとつ手作業でつくられたセラミック製のインテリアです。愛着を持ってもらいたいという想いをかたちにするうえで、金属以外の素材を採用したいと思いました。そこで人々の手仕事と土の歴史のうえにある多治見のセラミックが、最適な素材であると考えたのです。

アートと共に働くこと

―― 職人とデザイナーが力を合わせてつくった作品でもありますね。アーティゾン美術館を象徴に、ミュージアムタワー京橋はアートが豊富に揃った環境です。こちらのフロアを含め、このビルで働く人々に対して、アートはどのような影響を与えるとお考えですか。

湯山 水や空気のように、アートが身近な存在になり得る環境がここにはあります。なるべく綺麗な水を飲みたい、綺麗な空気を吸いたいという本能的な欲求を自覚すると、心身の調子が整うようなことがありますよね。日常的にアートに接する生活というのは、まだまだ一般的ではないかもしれない。しかし、ここは場所そのものがアートに紐づいています。素晴らしいアートがそばにあるという環境には、心身ともに人々に良い変化をもたらすだろうという期待を抱くことができます。

オフィスラウンジ内を歩きながら対話する湯山皓氏と高根枝里氏。

―― I IN(アイイン)として今後どのようなクリエイションを手がけていきたいですか。

湯山 アートギャラリーのデザインへの興味が以前からあります。ホワイトキューブのように存在感を消す方向のデザインではなく、空間も含めてアートを楽しめるようなギャラリーがあってもいいのではないかと。空間そのものに魅力を感じてもらえるデザインを手がけたいですね。

また、日本のインテリアデザイナーとして世界に選ばれる仕事をしていきたいという想いがあります。世界に通用するデザインを目指すと同時に、日本にルーツがあることで生みだすことのできるデザインは何かといったことを模索し続けています。このオフィスフロアにも、日本的な感覚を喚起する要素をデザインに落とし込んでいます。

―― 畳や障子を用いることだけが「日本的」ではない。I INだからこそ示すことのできる解釈やデザインをとても楽しみにしています。

湯山 皓

インテリアデザイナー。インテリアデザインオフィス「I IN(アイイン)」共同代表。2018年に東京でI INを設立し、店舗やレストラン、オフィス、住宅、インスタレーションなど幅広い分野の空間デザインにおいて、モダンラグジュアリーの世界を追求している。 突き抜けた美しさのあるインテリアは豊かな未来を感じさせ、人々の記憶に残るデザインとして国内外で評価を受ける。 主な受賞歴に、INTERIOR DESIGN Best of Year Awards、iF Design Award、FRAME AWARDSがある。

聞き手:高根枝里(Tokyo Gendai)
文:長谷川智祥